微生物を利用した環境浄化
   (微生物による環境汚染物質の分解)

 地球上にはさまざまな環境が存在し、微生物はそれら環境に適応して多様な機能を発揮しています。その中には環境ホルモンをはじめとする人工化合物(環境汚染物質)に対しても適応進化し、分解能力を獲得したものも多数存在します。我々は、これら微生物を様々な環境中から探し出し、環境汚染物質分解に関わる酵素や遺伝子の構造と機能、さらには分解遺伝子の進化メカニズムを分子レベルで解明する基礎的研究を行っています。得られた知見は、遺伝子工学・タンパク質工学などの手法を活用した環境浄化細菌の育種、有用物質生産などへの応用に利用されます。

環境汚染物質分解菌の
電子顕微鏡写真

新しい環境汚染物質分解微生物の検索
         -世界中で誰も見つけたことのない微生物を探し出す-
 環境汚染物質を分解・除去できる微生物を土壌・河川・海洋などの生態系から探し出し、その性質を解析して環境浄化に利用できる微生物の開発につながる研究を行っています。
これまでに多数の環境汚染物質分解菌を探し出すことに成功しており、その一部を下に示しています。現在、探し出した微生物の性質を詳しく研究しながら、さらに誰も見つけたことのない新しい微生物を探しています。

     
図 環境汚染物質分解菌の16S rRNA遺伝子に基づく系統解析 赤字が当研究室で分離した分解菌

新しい微生物代謝系の発見
  (環境汚染物質分解遺伝子群の分子遺伝学的研究)
 環境中には、わたしたちが知らない代謝系を持った微生物がたくさん存在しています。当研究室では、環境中から探し出した環境汚染物質分解菌がどのような代謝系で環境汚染物質を分解しているのかを分子レベルで解明して、分解能の強化や新たな分解能を付与した環境浄化細菌の育種を目指しています。その一例として、当研究室で発見した2-ニトロ安息香酸の分解経路と分解系遺伝子群の配置を示しています。この分解系遺伝子群は、分解に関わる酵素遺伝子、トランスポーター遺伝子(細胞内への物質の取り込みに関与)、走化性レセプター遺伝子(細菌が物質を見つけて、近づいていく能力に関与)とこれらの遺伝子の発現を制御する制御遺伝子が全て近傍に位置する極めて珍しい例であり、分解系遺伝子の進化を明らかにする上でも注目されます。 




 
図  2-ニトロ安息香酸の分解経路と分解系遺伝子群



図 2-ニトロ安息香酸分解の初発酵素(ニトロレダクターゼ;NbaA)のホモロジーモデリング


走化性
 多くの細菌は、運動性をもっています。彼らは、やみくもに動いているのではなく、特定の環境因子を認識して、誘引・忌避応答を示します。環境因子が、化学物質の場合、この応答を特に“走化性”と呼び、誘引応答を“正の走化性”、忌避応答を“負の走化性”と呼びます。環境汚染物質分解菌の中には環境汚染物質に対する走化性を示すものも存在します。走化性はバイオレメディエーションの効率に影響を及ぼすと考えられていることから、我々は Pseudomonas KU-7株の2-ニトロ安息香酸に対する走化性をモデルとして研究を行っています
   図 KU-7株と走化性物質を認識するレセプター遺伝子(nbaY)欠損変異株の2-ニトロ安息香酸に対する走化性
KU-7株は3つのアッセイ法で走化性を示すリングが観察されるが、レセプター遺伝子欠損変異株ではリングが観察されない。




関西大学化学生命工学部生命・生物工学科(学部版)生命・生物工学科(学科版)